松前藩主の黒色Diary

タイトル通りです。松前藩主とかいうどこぞの馬の骨が、日々を黒(歴史)に染め上げていく日記です。

過労死マラソン第3コーナー

5月の終わりにも書いたことだが、個人の能力であったり、労働生産性と給料は実はあまり比例しない。

つまり、簡単に言えばサボったほうがお得なのである。

仕事は仕事と割り切って、お金を稼ぐための手段でしかなく、何ならお金を稼ぐことも手段でしかないので、仕事なんてものは手段のための手段でしかないのだ。そこに熱量を注いでも大した意味はなく、むしろ本懐を達成するための熱量を奪われているという考え方すらできる。

つまり、少ない労力と熱量で、基準値以上の成果を挙げることが、この国で仕事をする上で最も効率の良いスタンスではないだろうか。

 

そんなスタンスを体現すべく、6月頭の研修第3タームはとにかく手を抜いている。というより、はっきり言ってつまらない。興味が湧かない。

1日にあまりにも手を抜きすぎたら、班員から無言の戦力外通告を叩き付けられ、2日はひたすら雑用をさせられた。まぁ一人で黙々と手を動かすのは割と好きな方なので、それ自体はあまり不満じゃない。強いて言えば、周囲がやれ彼氏はいるのかだの今日の飲み会がどうとかだのそういう話を大声でするので、それが集中力を削ぐくらいだ。でもそれは過去の自分が犯した失態でもあるので、とりあえず目を瞑ることにした。最後は「これで給料を貰えているんだ」という精神で行くことにした。

 

3日の午前中に、光回線が開通した。なぜかスマホとの相性が悪いのだが、ちゃんと繋がれば通信速度は300Mbpsも出ていた。一人暮らしではオーバースペックすぎたな……。しかもなぜかマンションタイプを頼んだのにファミリータイプと勘違いして繋いでいた。まぉ相手の勘違いなので、このまま料金がマンションタイプならそれでよし、ファミリータイプになって料金が上がったらなんか話違いますよーなどと言って変えてもらえば良いだけの話だ。

そんな悪しき考えをしていたら、午後から鼻水が永遠に出てきて、季節外れの風邪をひき始めた。ハウスダストも手伝ったかもしれない。

 

この風邪は5日の月曜日になっても回復せず、喉の痛みと倦怠感と闘いながら、更につまらない業務と周囲からの突き刺さる視線とも戦わないといけないという四面楚歌状態だった。一つ前の研修担当者が遊びに来て、自分も先週風邪ひいたよなんて話をしてくれたのがわずかながらの救いだった。

 

6日もつまらない研修の続き。なぜつまらないのかを色々考えてみるが、一向に結論が出せない。つまらないから考えたくないのに、その理由を考えるなどつまらなさの極致なので、それはもう拷問のようなものだ。強いていうなら、変化可能性が低いこと、選択肢を知らない状態で何も提示されないことなどが挙げられる。何も変わらないし何も変えられないものを変えようとすることに意味を感じられない。

 

7日になり、喉の痛みが少しひいてきた頃。ようやく研修に対するモチベが少し上がってきた。午後には最後の研修第4ターンの振り分けも発表されて、希望通りの研修を受けることが出来ることになったので、良かったと思う。自分の行きたい場所では、たくさんの製品を扱っているので、何か一つが楽しくなくても他の製品に乗り換えられそうなのが良い。

 

9日は研修第3ターンの発表日。しょうもない質問をいくつかして、最後に少しだけ存在感をアピールして終わることにした。フィードバックで、「君は黙々と作業していたのが良いね」とかいう何のフォローにもなっていないコメントを頂いた。まぁ素直に協調性が足りませんとか言われるよりはマシか。

 

10日に両親が車を届けにきた。たった5年しか乗ってない状態の良い車をくれるそうだ。本当に恵まれている。流石にタダであげるわけにはいかないとのことで、何十万か払うことになったが、それでも破格すぎる値段だ。その後、自分の住む街を少し案内して、都心部に出て焼き鳥を食べて解散となった。焼き鳥も12,000円くらいしてびっくりした。これは一生かけても恩返しは無理そうだ。せめて少しでも何か返せるよう頑張ろう。

 

12日、永遠に終わると思った研修は最終ターンを迎えた。さてやるぞーと意気込んで研修に行ったら、「とりあえず製作体験という感じで、特に何も考えなくて良いです」「目的ですか?こちらも知りません」そうそうこの感じ。やはりこの部署を第一志望に据えて良かった。作業内容も一人で黙々とこなすタイプなので、性に合う。ペアを組んだ人は真逆のタイプで、それはもう半狂乱で作業していた。

 

13日、半狂乱の彼と話すことしかやる事がないので、色々と話すことになった。どうやら彼はこの会社にとってオーバースペックな人財らしい。行動力の塊で、自らの弱点を克服すべく動ける人で、自主的に勉強できて、更にはショートスリーパーときた。2時間しか寝なくて良いらしい。お酒もタバコも嗜んでいるので早死にしそうだが、ショートスリーパーほど活動時間が長いので成功しやすい気はする。人生が暇だと言っていたが、そんな彼に何かを吹き込むことが出来たら、きっと何かの第一人者になれそうだ。とりあえずゲームを勧めておいた。

 

14日、そろそろ単純作業にも飽きてきて、これでお金を貰えるんだから幸せなのだと自分を言い聞かせて仕事をした。朝のバスで秒速5センチメートルを読んでいると、自分も知らないうちにどこかで心のハリを失って、社会の歯車として機能していくのだろうという絶望感を覚えつつ、それでも抗う気にもなれないあたり、既に洗脳されつつあるのかもしれないと思っている。これは何度も言っていることだが、人は諦めた数だけ大人になるのだ。

 

15日はタイ人と一緒に作業した。そんなことある?

どうやら海外工場の研修の一環らしい。と言っても自分は机の隅っこでひたすら作業を続けていた。そろそろ体力的にも精神的にもキツくなってきた。何か修行僧にでもなった気持ちだ。何なら諸行無常の響きありとか行く川の流れは絶えずしてとかぶつぶつ言いながら作業していた。限界だった。

 

16日は同期飲み会。有名デパートの屋上にあるビアガーデン的な場所で行われたのだが、これが全く面白くない。

ご飯もお酒も大して美味くない上に、謎の専属アイドルのステージは素人カラオケ大会だし、PAも雑魚で、ハウリングも当たり前にあった。ただでさえ美味しくない飯が更に不味くなり、鼓膜もいかれて、ついでに目線は常に机を見ていたので、この時点で視覚嗅覚味覚聴覚は機能を果たしていなかった。あまりの酷さに、解散後に一人でお口直しをするか本気で迷ったほどだ。その店を探すのも面倒なので、結局一目散に帰りの電車に飛び乗った。帰りにセブンでスイーツでも買おう。

食わず嫌いは良くないと思ってとりあえず参加したが、ちゃんと食べて嫌いになったら、後は食べなくて良いですよね?

 

その帰りの電車では、ピンクの髪にピンクのシュシュにピンクのマスクにピンクのブラウスにピンクの腕時計にピンクの日傘、左手に何箇所もリストカットの跡がある若い女性が隣に座り、しきりに咳き込みながら、カップルTiktokerやメイクのショート動画を見て、ついでにコメントも食い入るように見つめていた。こっちの方がよっぽど面白いじゃないか。

 

この土日は非常に非生産的だった。ダラダラとして、ゲームして、VCT見て終わった。せいぜい土曜日に真のお口直しとして近くの中華料理屋を開拓したくらいか。土日が始まった時には、色々やろうと思っていたが、そんな思いはどこかへと消えてしまった。

「日々をかわして生きる」という表現は、まさにこのことかと思う。平日の溜まった疲労とストレスのせいで、休日はそれらの返済に充てられる。そんな日々に目標も喜びもない。毎日を送ることだけで精一杯で、それ以上の付加価値なんて付けられない。

こうして人は死んでいくのだろうと思った。

 

19日、最後の個別研修もあと3日。今日からは別のテーマだ。個別研修とは名ばかりの、先輩社員のテーマのお手伝いである。ローラー作戦なので、新入社員の手を借りて行いたい魂胆でもあるのだろう。

さて、ペアになった女性は、典型的なおしゃべりタイプだった。人は多くを聞くより多くを語りたがるもので、彼女は聞かれてもいないプライベートな話を先輩社員にべらべらと話していた。一方、自分はぼーっと聞いていた。何ならちょっと不機嫌な顔をしていたかもしれない。大して面白くもない身の上話を聞かされてもなお、いい顔をしないとモテないというのなら、モテなくても構わないと改めて決心した。

同時に、自戒もした。自分は、このようにつまらない話をしていないだろうか。つまらない話を聞かされるという苦痛を、与える側になっていないだろうか?昔からずっとその思いが通底していたからこそ、何か思い浮かんでもすぐ喋らない癖が付いて、結果としてコミュ障になってしまったのだ。

 

22日から4日間は、デザイン思考研修みたいなものだ。英単語を散々並べてイノベーションがどうとかブルースカイを目指せとか言う割には、YouTubeの動画再生もままならない担当者だった。新たな市場を開拓する前に、この研修がデザインされていない問題について考えた方が良いと思うのです。

「あるドリルが年で100万個売れました。この市場にはどんなニーズがありますか」と言われたので、
経産省のデータを見ると、日本では年に100万個以上売れているので、この市場のニーズはないというのがニーズなんじゃないか」と言ったら笑われました。

 

23日に中間報告したら、研修担当者に半ギレされた。課題が広すぎるらしいが、そもそもイノベーションを起こすためには、ニッチなニーズにアプローチしつつ、包括的な解決案を考えたほうが良いと思う。スタートはニッチでも、それを拡張して一般化したほうが、ポテンシャルは高いと思うのだが、結局、研修担当者によってある程度方向付けされているので、それにどれだけ沿えるかの戦いでしかない。

帰りのバスで、久しぶりに研究室の同期LINEが動いた。どうやらお盆に飲み会でもするらしい。自分はとりあえず黙っておこう。呼ばれてもいないし、呼ばれても何か価値を提供できない。

 

24,25日はひたすらゲームをした。最高の土日だったが、やるべきことは全て山積みとなった。このしわ寄せは来週の平日の夜に少しずつ解決しないといけない。

 

26日に謎のチケットを配られた。社内学会の参加チケットのようなものだ。チケットを配る理由は何となく理解できるが、それならバーコードとかでも良いのでは……?

このチケットが一波乱を予感させた。新入社員のほぼ全てが参加会場が5階に設定されていたのに、自分を含む7人だけが4階に設定されていた。その割り振りの真意を巡って、噂に噂を重ね合わせた結果、他拠点への配置換えの予告かのように捉えられ、泣き出す人まで出てきた。かくいう自分も多少動揺したが、ちゃんとメールを見れば参加会場はランダムだと明記してあるし、選ばれた7人に大した法則性は見受けられない。ひぐらしのなく頃にを思い出した。閉鎖空間で、何の根拠もない噂話がそれらしく語られ、勝手に疑心暗鬼に陥る様なんか、まさにその通りだと言える。明日には殺人事件でも起きないことを願おう。

 

27日はデザイン思考の最終報告。他と比べたことがないので分からないが、多分今年の新入社員はよく質問をするので、わざわざ自分が出張らなくて助かる。おかげさまで全班手を上げたが、全く当てられなかった。みんな積極的で良いことだ。決して自分の存在感が薄いとかそういう話ではない。……そうだよね?

 

28日、遂に運命の辞令交付。ここで何人かは配置換えを食らうという理不尽。他拠点に行くこと自体は、まあ良い。ただ、一旦本社に呼び寄せて、賃貸の契約までさせておいて、また別の場所に行けというのは横暴だし、更に引っ越し代の上限額が低いことはもはや犯罪級だと思う。一応東証プレミアなのに、会社都合の引っ越し代を会社が全額負担しないって有り得るのか?

ま自分には関係ない話なので、とりあえず良かったのですが。

しかし噂話には悩まされました。上記のチケットもそうです。自分の去就を気にするならともかく、なぜ他人の去就に一喜一憂できるのでしょうか。自分には分かりません。

 

29日、長かった研修もあと2日。と言っても、どうせ7月からもまた新たな名前の研修が始まるのだろうと思っている。手を変え品を変え名前を変えて、研修は年単位で進められるのだろう。

そんな研修の中でワースト3に入るレベルの内容が、今日行われた。それは、膨大なテスト用紙を膨大な資料を見ながら解く作業である。これを理解度テストなどと呼称していた。もう何から突っ込めばいいか分からなかったが、とりあえず班員と分担して予定より早く終わらせ、後はゲームでもして暇を潰していた。こんなんで給料を貰って良いのだろうか?

 

6月にして、末尾に書く文章が浮かばないほど、既に生活はルーティン化した。

せっかくなので、現在の社内での自分のポジションについて考えてみる。

まあ一言で言えば、変人枠である。上記のような変な発言と変な挙動を繰り返せば、当然の帰結である。おかげさまで、発表のために前に出るだけでなんか失笑が漏れ出てくるほどになってしまった。

そして、一人が好きだということももう既に知れ渡り、今や話しかけてくる同期はほとんどいない。

まとめると、変なやつで時々面白いけどそっとしておこう、とかそんな扱いである。完全に腫れ物と同じである。

それでも、過剰に期待されるよりマシだと思う。

もう、誰かの期待は背負いたくない。

だから、これで良い。